次の一棟の融資が断られたとき、金融機関が見ているのは三つです。借りる人の返済力、買う物件の担保としての評価、自分で入れる自己資金の厚み。どれが足りなかったのかを分けないまま次の銀行を回ると、同じ場所でまた止まります。
銀行融資・金利
不動産投資の 融資が 通らない 大家へ |自己資金を 事業で つくる
公開 更新

「断られた理由を分けないまま次の銀行に回っても、同じ場所で止まります。」。不動産投資の融資が通らない状態とは、返済の原資を見る属性と、担保となる物件の評価と、自己資金の厚みのどれかが金融機関の基準に届いていない状態です。どれで止まったかによって、次にやることが変わります。
運営は宅建業者の株式会社リアテクスで、リアサポは当社の開業・経営の支援のサービスです。金融機関との個別の折衝や借換えの相手方になることはせず、免許を取って事業側で資金をつくる場合の順番と費用の整理をお手伝いします。自分の場合の開業の順番だけ、先に確かめる(無料セミナー)
目次(6章)
先に自分の場合の開業の順番だけ知りたい方へ。
無料オンラインセミナーの日程を見るこの先は当社の無料セミナー「リアサポ」です。
不動産投資の 融資が 通らない 原因は、 3か 所の どれかに ある

融資が通らない原因は、借りる人の属性、物件の担保評価、投じる自己資金の厚みという3か所のどれかに落ちます。
一棟目は通ったのに二棟目で止まった、三棟目の打診で急に相手の口調が変わった。この順番で起きるのは、借りた分だけ属性側の数字が動くからです。買う物件を替えれば進むこともあります。同じ物件でも、自己資金を厚くすれば話が戻ります。逆に、物件を探し直しても結果が変わらないことがあります。そのときは、物件ではないところで止まっています。
三つのうち、自分の手で短期間に動かせるのは自己資金だけです。属性は勤務先や年収で決まる部分が大きく、来月に変えられるものではありません。担保評価は、物件を選び直せば変わります。ただし、選び直せる物件の範囲は自己資金の額で決まります。結局、どの経路をたどっても現金の厚みに行き着きます。だからこそ、自己資金をどこからつくるのかが次の論点になります。
断られ方の 言い 換えから、 止まった 場所を 読む
金融機関の断り文句は短いものです。「今回は行内の基準に合いませんでした」で終わることも少なくありません。理由の開示を義務づける仕組みはありません。そのまま引き下がると、手がかりが残りません。聞き方を変えると、輪郭までは出ます。
聞くのは、条件を変えたら検討の余地があるかどうかです。「物件を変えればご検討いただけますか」と尋ねてみます。前向きな反応が返るなら、止まったのは担保評価です。「自己資金をもう少し入れた場合はいかがですか」で反応が変わるなら、自己資金の比率です。どちらを変えても反応が変わらないなら、借りる人の側で止まっています。返済比率、既存の借入残高、勤続年数といった項目は、物件を替えても動きません。
この質問をする相手は、窓口の担当者で構いません。担当者は審査の決裁者ではありません。それでも、行内でどの項目が引っかかったのかはおおむね把握しています。断られた直後に電話で聞いても、深い話は出にくいです。次の相談を持ち込む前提で面談の時間をもらう方が、具体的な話につながります。そのとき、断られた案件の資料を手元に置いて、項目ごとに確認していく形にしてください。
聞いた内容は、その日のうちにメモに残します。三行で足ります。どの物件を持ち込んだか、どの項目で止まったと言われたか、条件を変えた場合の反応はどうだったか。これを金融機関ごとに並べると、自分の頭打ちが人の側なのか物件の側なのかが、二、三件目で見えてきます。
属性は 動かしに くく、 担保評価と 自己資金は 動かせる
属性という言葉で一括りにされるのは、年収、勤務先、勤続年数、保有資産、そして既存の借入の状況です。会社員として給与を受け取っている人にとって、このうち短期間で動かせるものはほとんどありません。転職すれば、勤続年数は振り出しに戻ります。年収が上がっても、反映されるのは次の確定申告や源泉徴収票が出てからです。
既存の借入だけは、返済によって減っていきます。返済が進めば残高は減り、賃貸物件の元本も同じだけ減ります。ただし、その速度は借入期間に縛られます。繰上返済で残高を減らす手もあります。ただし手元の現金を使うので、自己資金の厚みとは逆方向に働きます。どちらを優先するかは、次の融資をいつ受けたいかで決めることになります。
自宅の購入を控えている人は、順番に注意してください。住宅ローンを先に組むと、その返済額が属性側の計算に入ります。投資用の融資を先に受けたい場合と、自宅を先に購入したい場合では、金融機関に持ち込む順番が変わります。どちらが正しいという話ではありません。同じ年収でも、先に組んだ方が枠を使うという関係があるだけです。家族の予定と重なる論点なので、片方を決める前に両方を紙に並べてください。
投資の全体の組み立て方は、「不動産投資の始め方」の記事で扱っています。一棟目の前に決めておく順番と、二棟目以降で詰まる場所は、見るべき項目が違います。
条件を変えた際の金融機関の反応から、属性と担保評価と自己資金のどれが原因かを探る
融資が止まった場所を探る手順
- 1
物件を変えるか尋ねる
前向きな反応なら、担保評価で止まっている
- 2
自己資金を増やすか尋ねる
反応が変わるなら、自己資金の比率が原因
- 3
どちらも反応なし
物件を替えても動かない属性側で止まっている
信用情報と、 ローン審査の 期間中に やらない 方が よいこと
信用情報に延滞や事故の履歴が残っていると、他の条件が整っていても審査が止まります。自分の情報は、信用情報機関に開示を請求すれば本人が確認できます。個人の信用情報を扱う機関は国内に複数あります。クレジットカード系、消費者金融系、銀行系で、登録されている範囲が違います。心当たりがある人は、融資の相談を始める前に取り寄せておくと、無駄な打診を減らせます。
携帯電話の端末代金の分割払いが割賦契約として登録されていることは、意外と知られていません。数か月の引き落とし漏れが記録に残っていて、本人が気づいていない例もあります。開示の請求は郵送やインターネットで受け付けられていて、手数料がかかります。額は機関ごとに違うため、それぞれの案内で確かめてください。
ローン審査の期間中にやらない方がよいことも、はっきりしています。新しいクレジットカードやカードローンを申し込むこと、自動車ローンを組むこと、転職すること、カードの支払いを遅らせること。どれも審査の途中で状況が変わったと判断される材料になります。申込の履歴そのものが、一定期間残ります。複数の金融機関に短期間で同時に打診するのも、見られ方としては不利に働きます。
借入の申込をするときは、既存の借入をすべて申告してください。自宅の住宅ローン、車のローン、教育ローン、カードローンの枠。申告していないものが後から出てくると、金額の問題ではなく申告の姿勢の問題として扱われます。宅地建物取引業法は、宅建業者が重要な事実を故意に告げない行為を禁じています(宅地建物取引業法47条1号)。ただしこれは、業者側の義務の話です。借りる側の申告は、金融機関との契約上の信義の問題として効いてきます。条文そのものはe-Gov法令検索の宅地建物取引業法で確認できます。
「不動産投資の融資が通らない原因は、3か所のどれかにある」の先の進め方は、無料セミナーで整理できます。
不動産投資の 融資が 通らない 理由は、 属性・担保評価・ 自己資金で 分かれる

同じ「通らない」でも、属性で止まったのか、担保評価で止まったのか、自己資金で止まったのかで、次の打ち手はまったく別になります。
そこに、借りる側では動かせないもう一つの軸が重なります。金融機関の側の事情です。同じ属性の同じ人が、同じ物件を、時期を変えて持ち込むと結果が変わることがあります。断られた理由を自分の中だけで探していると、この軸を見落とします。
1. 属性で 分かれる :年収・勤務先・ 既存借入の 残高
属性の評価は、返済の原資がどれだけ安定しているかという一点に向かっています。毎月の返済が滞らない見込みが立つかどうかを、給与という定期の収入と、いまの借入の重さから測る作業です。上場企業の会社員、公務員、医師や士業といった職業は、高属性に分類されやすいと言われます。収入の継続性が読みやすいからであって、人物の評価ではありません。
見られる項目と、その動き方を並べると次のようになります。
| 見られる項目 | 通る方向に働く状態 | 止まる方向に働く状態 |
|---|---|---|
| 年収と勤務先 | 給与の額が数年にわたり安定している | 変動が大きい、勤続が短い |
| 既存の借入 | 残高が減り、返済の実績がある | 枠を含めた残高が年収に対して重い |
| 金融資産 | 借入と別に手元の現金がある | 頭金を入れると手元が空になる |
| 賃貸の実績 | 既存物件の稼働と収支が安定 | 空室が続き、収支が赤字 |
表の4行のうち、いちばん早く効くのは最後の「賃貸の実績」です。すでに持っている部屋の稼働が落ちていると、新しい物件の収益見込みも割り引いて見られます。決算書や確定申告書に出てくる数字が、そのまま材料になります。空室の解消と家賃の設定の見直しは、次の融資の準備そのものだと考えてください。
副業として賃貸をしている会社員の方は、勤務先の就業規則も先に読んでおいてください。規模によっては届け出が要ります。金融機関に提出した資料と、勤務先に申告している内容が食い違うと、後で説明が難しくなります。
2. 担保評価で 分かれる :積算評価と 収益還元、 築年と 構造
担保評価は、二つの見方で組み立てられます。その物件を処分したときにいくら回収できるかという見方と、その物件がいくら稼ぐかという見方です。前者が積算評価、後者が収益還元の考え方です。どちらに重きを置くかは金融機関によって違い、同じ物件でも評価額が大きく変わります。不動産投資ローンで担保評価が重要と言われるのは、この評価額が融資の上限を直接押さえるからです。
積算評価は、土地と建物を分けて足し上げます。土地は、路線価や公示地価といった公的な価格を基準にします。建物は構造ごとの再調達の価格に、残っている年数の割合を掛けます。ここで効いてくるのが法定の耐用年数です。e-Gov法令検索の減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表第一では、住宅用の木造が22年、住宅用の鉄筋コンクリート造が47年と定められています。築25年の木造アパートは、この計算では建物部分がほぼ残りません。土地の評価だけで価格に届くかどうかが、通るか通らないかの分かれ目になります。
収益還元の見方では、満室を前提にした想定の賃料ではなく、実際の稼働と経費を引いた後の数字が使われます。募集中の部屋が多い物件、家賃の下落が続いている地域の物件は、ここで評価が落ちます。土地の値段が安い地方の高利回り物件は、利回りの数字ほど評価されないことがあります。この二つの見方の両方で、伸びにくいからです。
借入の期間も、構造と築年で決まる部分があります。法定の耐用年数の残りを融資期間の目安にする金融機関があります。そこでは、築年が進んだ木造の物件に長い期間は出ません。期間が短ければ毎月の返済が重くなり、収支が薄くなります。利回りだけを見て物件を選ぶと、この段階で計算が合わなくなります。
公示地価や実際に成約した取引の価格は、国土交通省の不動産情報ライブラリで、地図から地域を指定して調べられます。自分が買おうとしている地域の価格の水準を先に見ておくと、売主の提示価格がどのあたりにあるかの見当がつきます。
給与の安定性や既存の借入残高など、金融機関が属性を測る際に確認する項目
属性の評価で見られる主な項目
給与の安定性
数年にわたり安定か、変動や勤続が短いか
既存借入の重さ
返済実績があるか、年収に対して重いか
手元の現金
借入と別に現金があるか、頭金で空になるか
既存物件の収支
稼働が安定しているか、空室が続き赤字か
3. 自己資金で 分かれる :頭金の 比率と、 手元に 残す現金
自己資金は、頭金として物件価格に充てる分と、諸費用に充てる分と、手元に残す分の三つに分かれます。この三つを一つの袋で考えていると、購入の直後に現金が尽きます。
諸費用は、融資の対象から外れることが多い部分です。登録免許税と司法書士の報酬、不動産取得税、火災保険料、そして仲介手数料。このうち媒介報酬には上限があります。売買価格が400万円を超える場合は、価格の3%に6万円を加えた額です(別途消費税)。この額を定めているのは、宅地建物取引業法46条1項に基づく国土交通大臣の告示(昭和45年建設省告示第1552号。その後の改正を含む)で、低廉な空家等の売買や交換の媒介については、この計算とは別の特例が置かれています。この上限の存在は、買う側にとっては諸費用の見積りの上限が読めるという意味を持ちます。
自己資金を設定するコツを一つだけ挙げるなら、手元に残す分を先に切り分けることです。残す分の目安は、既存の物件を含めた年間の返済額と、想定される修繕の額から逆算します。給湯器やエアコンの交換、退去のたびの原状回復、外壁や屋根の修繕。どれも予告なく来ます。手元が薄い状態で空室と修繕が重なると、返済のために別の借入をすることになります。すると、次の融資はさらに遠のきます。
頭金の比率をどこまで上げるかは、次の一棟をいつ買うかで変わります。比率を上げれば今回の融資は通りやすくなりますが、手元が減るので次の物件までの期間が延びます。比率を下げれば手元は残りますが、返済が重くなり、既存物件の収支が薄くなります。どちらに振るかを決めるには、次の一棟の時期を先に決めてしまう方が早いです。
自己資金が足りないという結論に行き着いたとき、道は二つしかありません。貯める速度を上げるか、貯蓄以外の収入で自己資金をつくるかです。給与からの積立だけで数百万円を用意する期間を数えてみて、それが自分の計画に合わないなら、二つ目の道を検討することになります。
4. 銀行側の 事情で 分かれる :時期・地銀の 実績・審査の 変化
同じ条件でも、持ち込む時期によって結果が変わります。金融機関には期ごとの融資の計画があり、不動産向けの残高をどこまで伸ばすかという方針も、年度によって変わります。個人の投資家からは見えない部分ですが、担当者が「今期は難しい」という言い方をするときは、この事情が背景にあります。断られた理由が自分にあると決めつけず、半年後に同じ資料で持ち込んでみる価値はあります。
地方銀行や信用金庫は、営業の区域と実績を重視します。その地域に住んでいるか、その地域に物件を持っているか、その支店との取引の履歴があるか。これらは属性でも担保評価でもない、関係の話です。給与の振込口座を作る、既存物件の管理の入出金をその口座に集める、定期積金を始める。地味ですが、取引の実績は書類に残ります。はじめての支店に一棟目の融資を持ち込むより、実績のある支店に二棟目を持ち込む方が話が早いのは、この理由です。
2018年に表面化した投資用不動産向けの融資をめぐる問題も、いまの審査の形に影響を与えています。預金残高の資料が改ざんされていた、賃料の見込みが実態と違っていた、といった事例を受けて、金融庁は2019年3月に「投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果」を公表しています。その後、自己資金の裏づけや物件の収支の確認が厳しくなったと言われます。通帳の原本や、口座の履歴の提出を求められる場面が増えたのは、この流れの中にあります。
言い換えると、書類を整えている人ほど通りやすくなったとも読めます。物件の資料、既存物件のレントロール、確定申告書と決算書、返済予定表、通帳。これらが揃っていて、数字が互いに矛盾していない状態をつくるのは、個人でもできることです。
空室の解消と家賃設定の見直しを行い、次の融資に向けた実績を作る手順
既存物件の収支改善から次の融資への流れ
- 1
既存物件の稼働を確認
稼働が落ちていると新物件の収益見込みも割引
- 2
空室解消と家賃見直し
決算書や確定申告書の数字を改善する
- 3
次の融資の準備完了
収支の安定が次の融資の材料になる
同じ属性や物件でも、金融機関の事情により時期を変えると審査結果が変わる動き
時期によって変わる金融機関の融資姿勢
ある時期
融資の打診と見送り
同じ属性・物件でも金融機関の事情で断られる
時期を変える
同じ条件で再度持ち込む
借りる側の条件が同じでも結果が変わることがある
「不動産投資の融資が通らない理由は、属性・担保評価・自己資金で分かれる」の先の進め方は、無料セミナーで整理できます。
不動産投資の 融資が 通らない間に、 自己資金を 事業で つくる 手順

止まっている間にできるのは、断られた理由を書類で確かめることと、宅建業の免許を取って仲介や買取再販の報酬を自己資金に回す道を検討することです。
給与からの積立だけで自己資金を厚くしようとすると、期間が読めます。仮に月10万円を積み立てるとすれば、1年で120万円、3年で360万円という計算になります(いずれも仮の試算)。それが自分の計画に合うなら、そのまま続けるのが単純で確実な道です。合わないと感じたときに、事業側からお金をつくる選択肢が出てきます。
1. 断られた 理由を、 決算書と 返済予定表で 確かめる
手元にそろえる書類は決まっています。直近3期分の確定申告書と青色申告決算書、既存の借入の返済予定表、物件ごとのレントロール、固定資産税の納税通知書、そして自己資金の裏づけになる通帳です。これらを一つのファイルにまとめると、金融機関が見ている自分の姿が、そのまま形になります。
まず見るのは、既存の借入の年間返済額と、賃貸収入から経費を引いた額の関係です。返済が収入に食い込んでいる年があれば、そこが止まっている場所です。次に、空室の期間が長い部屋を洗い出します。家賃を下げて埋めるか、原状回復に手を入れて相場で埋めるかは、次の融資の資料に直接効いてきます。
確定申告の書き方も、見られ方を変えます。減価償却を大きく取って所得を圧縮していると、税負担は軽くなりますが、金融機関から見た返済の原資は小さく映ります。どちらを優先するかは、次の借入の時期と税の負担を並べて決める話です。この判断は個別の事情で変わるため、税理士に相談してください。
書類を整え終えたら、断られた金融機関とは別の系統にも当たってみてください。都市銀行、地方銀行、信用金庫、ノンバンク、日本政策金融公庫。それぞれ見る場所が違います。日本政策金融公庫には創業や事業の相談の窓口があり、制度の内容は公庫の案内で確かめられます。同じ資料を使い回さず、相手ごとに要る書類を先に聞いてから持ち込む方が、面談が短く済みます。
月10万円を積み立てた場合の、1年後と3年後の自己資金の貯まり方
給与からの積立による自己資金の推移
- 1年120万円
- 3年360万円
2. 賃貸だけで 続けるか、 宅建業の 免許を 取るかを 決める
自分が所有する物件を自分で貸す行為に、宅地建物取引業の免許は要りません(宅地建物取引業法2条2号)。大家として賃貸を続けるだけなら、免許の話はここで終わります。免許が要るのは、宅地や建物の売買・交換を業として反復継続して行う場合です。その代理や媒介を業として行う場合も同じです(同法3条1項)。所有物件を何戸も区分に分けて継続的に売却していく、知人の物件の売却を手伝って報酬を受け取る。こうした動きが重なると、この線を越えます。
線を越えたまま免許を受けずに営むことは、法が正面から禁じています。禁止の規定と罰則の規定は別に置かれています。禁止しているのは、宅地建物取引業法12条1項(免許を受けない者が宅建業を営むこと)と、同法13条1項(宅建業者が自己の名義をもって他人に宅建業を営ませること)です。この12条1項または13条1項に違反した場合の罰則は同法79条にまとめられており、3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金、又はこれらの併科と定められています。知り合いの業者の名前を借りて手数料を受け取る形は、13条1項が禁じる名義貸しに当たります。条文の文言そのものは、e-Gov法令検索で宅地建物取引業法を開いて確かめてください。判断に迷う取引があるなら、都道府県の窓口に事前に相談してください。
免許を取ると、収入の入口が増えます。他人の物件の売買や賃貸を媒介して報酬を受け取れるようになり、業者間の流通の仕組みにも入れます。自分が買う物件を業者間の流通から直接探せるようになり、仲介を通さずに買えれば、その分の仲介手数料は払わずに済みます。ただし、自分が買主や売主として当事者になる取引で、自分が媒介の報酬を受け取ることはできません。買取再販として、自分で仕入れて手を入れて売る形も選べます。どれも自己資金を厚くする方向に働きますが、売上が立つまでには時間がかかります。
もう一つ、事業としての実績が積み上がるという面があります。宅建業者として法人を立てて決算を重ねると、金融機関が見る材料が給与と賃貸収入だけではなくなります。事業の融資と不動産投資の融資は別の枠組みですが、取引の実績が増えること自体は、関係の話として効いてきます。すぐに効くものではないので、そこを当て込んで免許を取る判断は勧めません。
免許を取るかどうかを含めた開業の全体の流れは、「不動産の開業ガイド」の記事にまとめています。勤務先を辞める時期や、何年の実務を経てから独立するかという論点は、「不動産で独立するには」の記事の方で扱っています。
確定申告書や返済予定表など、金融機関が見ている自分の姿を形にするための書類
融資の理由を確かめるために揃える書類
確定申告書と決算書
直近3期分で所得の圧縮や税負担を見る
既存借入の返済予定表
年間返済額が賃貸収入に食い込んでいないか
物件のレントロール
空室期間が長い部屋がないかを洗い出す
自己資金の通帳
手元にある現金の裏づけとして提示する
固定資産税の納税通知書
保有物件の税負担を確かめる
3. 免許側の 費用と、 最初の 報酬が 入るまでの 資金繰りを 並べる
免許を取る側の費用は、法令で額が決まっている部分と、自分の選び方で動く部分に分かれます。動かせないのは保証金にあたる部分で、ここで開業時に用意する現金の桁が変わります。
| 項目 | 営業保証金を供託する場合 | 保証協会に入る場合 |
|---|---|---|
| 主たる事務所の分 | 1,000万円(施行令2条の4) | 弁済業務保証金分担金60万円(施行令7条) |
| その他の事務所ごと | 500万円(同) | 30万円(同) |
| そのほかにかかるもの | 供託の手続 | 入会金・年会費(協会が定める) |
額の根拠は宅地建物取引業法施行令2条の4と7条で、条文はe-Gov法令検索の宅地建物取引業法施行令で確認できます。入会金と年会費は法令ではなく協会が定めるもので、同じ協会でも都道府県の本部によって額が違います。入る予定の本部に、入会時に納める合計額と、翌年から毎年出る額を分けて尋ねてください。
保証金のほかに要るのは、免許の申請手数料、事務所の費用、専任の宅地建物取引士の確保です。東京都は、電子申請による新規・更新の免許申請の手数料を26,500円と案内しています(東京都住宅政策本部の電子申請の案内による。書面申請の額は都の手引で確認してください)。一度受けた免許にも期限があります。5年たてば効力を失うので、その前に更新の申請を出します(宅地建物取引業法3条2項)。事務所を1つの都道府県だけに置くなら都道府県知事免許です。2以上の都道府県に置くなら国土交通大臣免許で、区分は事務所の数で決まります。
事務所ごとに、専任の宅地建物取引士を置く必要があります。人数は、業務に従事する者の数に対して5分の1以上という割合です(宅地建物取引業法31条の3第1項、割合は施行規則15条の5の3)。一人で始めるなら、自分が宅建士になるのがいちばん単純です。登録には、試験の合格に加えて2年以上の実務の経験が要ります。実務の経験がないときは、登録実務講習を修了して同等以上の能力を認められる道があります(同法18条1項・施行規則13条の15)。宅建士証がまだ手元にない方は、試験の側から逆算してください。令和7年度の受験手数料は8,200円、受験者245,462人に対して合格者は45,821人で、合格率は18.7%でした(出典:一般財団法人不動産適正取引推進機構が公表した令和7年度宅地建物取引士資格試験の結果と受験案内)。合格から登録、宅建士証の交付までの流れは「宅建合格後にやること」の記事で扱っています。
そして、最初の報酬が入るまでの資金繰りです。売買の仲介は、媒介の依頼を受けてから決済までに数か月かかることがあります。その間の事務所の家賃、通信費、広告費、そして自分の生活費は、手元の現金から出ます。免許側の費用を払った後にいくら残るかを先に計算して、残りが何か月分の固定費に当たるかを数えてください。ここが薄いまま踏み出すと、賃貸の収支まで巻き込みます。
「不動産投資の融資が通らない間に、自己資金を事業でつくる手順」の先の進め方は、無料セミナーで整理できます。
融資が 通らない 大家が リアサポと 確かめる こと

相談のはじめに確かめるのは、売買や仲介を業として行う予定があるか、自分が専任の宅地建物取引士になれるか、保証金をどちらの形で用意するかの三つです。
取引態様:本メディアでは物件の売買・仲介を行いません。記事でご案内する無料セミナー「リアサポ」は、運営会社である当社のサービスです
宅建業の開業と経営を支援するサービスとして、当社が2022年秋に始めたのがリアサポです。無料セミナーはオンラインで約3時間かかります。開業の順番と費用の全体像を整理する場で、当社のサービス説明会を兼ねています。お問い合わせはメールで、セミナーのお申し込みは申込フォームから受け付けています。
融資が 頭打ちの 状況で、 先に 確かめる 3つ
売買や仲介を業として行う予定があるかどうかを、いちばん先に置きます。所有する物件を自分で貸すだけなら免許は要らず、開業の費用も発生しません。ここで「当面は賃貸だけ」という答えが出るなら、話は融資の準備の方に戻ります。免許を取る前提で費用の話を進めても、使い道がないからです。
次に見るのが、自分が専任の宅地建物取引士になれるかどうかです。宅建士証まで手元にある方と、試験はこれからという方では、開業の時期が1年単位で変わります。人を雇って専任に据える形を選ぶなら、売上が立つ前から人件費が固定費として出ます。融資が頭打ちの状態で固定費を増やすのは、手元の現金を減らす方向に働くので、ここは時期の話として一緒に考えます。
三つ目が、保証協会に入るか営業保証金を供託するかです。主たる事務所で1,000万円を供託するのか、分担金60万円に入会金と年会費を足すのか(宅地建物取引業法施行令2条の4・7条)。自己資金が足りなくて融資が通らない状況にある方にとって、この選択は手元資金の残り方をそのまま決めます。開業の費用が投資用の頭金を食ってしまうなら、順番を入れ替える判断もあります。
相談の場で多いのは、いま持っている物件を1棟売って資金をつくり、その資金で免許を取るという順番を考えている方です。この形は、売却の決済が済むまで保証金や事務所の費用を払えないので、開業の時期が買主と金融機関の都合に左右されます。売却を先に置くなら、決済の予定日から逆算して、専任の宅地建物取引士の登録がいつ終わるか、事務所として使う部屋の契約をいつ結ぶかを一緒に並べます。逆に免許を先に取るなら、売却が遅れた場合に何か月分の固定費を手元から出せるかを、先に数えておく必要があります。
フランチャイズへの加盟を並行して検討している方は、免許側の費用と本部への支払いが別物であることを先に切り分けてください。比較の観点は「不動産フランチャイズは加盟すべきか」の記事に書いています。
1000万円を供託する方法と、60万円の分担金で保証協会に入る方法の違い
営業保証金の供託と保証協会への加入の違い
| 観点 | 営業保証金の供託 | 保証協会への加入 |
|---|---|---|
| 主たる事務所の負担 | 1,000万円を供託 | 分担金60万円に入会金と年会費を足す |
| 根拠法令 | 宅地建物取引業法施行令2条の4・7条 | 宅地建物取引業法施行令2条の4・7条 |
| 手元資金への影響 | 投資用の頭金を食ってしまう恐れがある | 手元資金の減りを抑えられる |
当社の セミナーが 向かない 場合
いまある借入の借換えや、返済条件の変更そのものを進めたい方には、当社のセミナーは役に立ちません。当社は金融機関ではないので、借入の条件を決める側ではなく、既存の取引に入っていくこともできません。この論点は、取引のある金融機関の担当者か、財務に詳しい税理士に相談する方が前に進みます。
所有する物件を自分で貸すだけで、売買や仲介を業として行う予定がない方も、いま聞く内容にはなりません。免許が要らない範囲にとどまるなら、開業の順番も保証金の選択も出番がないからです。賃貸の戸数を増やす方向で詰まっているなら、まず既存物件の稼働と収支を整えることが、次の融資の準備になります。
免許の申請書類を作ること自体を任せたい方は、行政書士に依頼する方が早く確実です。当社は宅建業者であり、免許申請の代行はできません。セミナーで扱うのは、どの順番で何を決めるかと、費用がどこにいくらかかるかの整理までです。
なお、この記事の税務・法務に関する記載は一般的な情報提供であり、個別の事案についての判断ではありません。免許の申請については都道府県の窓口または行政書士、税務や融資については税務署・金融機関または税理士、契約や権利関係については弁護士など、それぞれの専門家にご確認ください。当社は宅建業者であり、税務や法律の代理、免許申請の代行はできません。
なお、当社がどのような立場でこのメディアを運営しているかは運営者情報に記載しています。免許番号もそちらでご確認いただけます。
「融資が通らない大家がリアサポと確かめること」の先の進め方は、無料セミナーで整理できます。
不動産投資の 融資が 通らない ときに 決める 順番
- 断られた理由を、属性・担保評価・自己資金のどれかに切り分ける。物件を替える、自己資金を積む、という二つの仮定を相手にぶつけると、輪郭が出る。
- 属性は短期間では動かせず、担保評価は物件の選び直しで変わり、自己資金だけが自分の手で厚くできる。どの経路も最後は現金の厚みに行き着く。
- 自己資金を貯蓄以外でつくるなら、宅建業の免許を取る道がある。ただし主たる事務所で1,000万円の供託か60万円の分担金かで、手元に残る現金が変わる(宅地建物取引業法施行令2条の4・7条)。
開業・経営の支援であるリアサポは、宅建業者である当社が運営しています。金融機関との個別の折衝には立ち入らず、免許側の順番と費用を並べるところからお手伝いします。
この先の進め方を選ぶ
宅地建物取引業 東京都知事(1)第107888号 取引態様:本メディアでは物件の売買・仲介を行いません。記事でご案内する無料セミナー「リアサポ」は、運営会社である当社のサービスです
不動産投資の 融資が 通らない ことに ついて よく ある 質問
Q1. 融資が 通らない 理由は 何ですか?
理由は、借りる人の属性、物件の担保評価、自己資金の厚みの三つに大きく分かれます。属性では年収と勤続年数、既存の借入の残高、既存物件の収支が見られます。担保評価では、土地と建物を足し上げる積算の見方と、実際の賃料から見る収益還元の見方が使われ、築年と構造によって評価額と融資の期間が変わります。自己資金は、頭金の比率だけでなく、諸費用を払った後に手元に残る現金まで含めて見られます。加えて、信用情報に延滞の履歴があると、他の条件が整っていても止まります。理由の開示を義務づける仕組みはないため、条件を変えたら検討の余地があるかを尋ねる形で、どこで止まったかを確かめてください。
Q2. 個人投資家の ローン審査は 厳しいですか?
個人と法人の審査の通りやすさを比べられる公的な統計は見当たらないため、どちらが有利だと言い切ることはできません。言えるのは、見られる場所が違うということです。個人では給与の安定性と既存の借入が中心になり、法人では決算の内容と事業の実績が加わります。2018年に表面化した投資用不動産向け融資をめぐる問題のあと、金融庁が2019年3月に「投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果」を公表しており、自己資金の裏づけや賃料の実態の確認は以前より丁寧になったと言われます。通帳の原本や口座の履歴を求められるのは、その流れの中にあります。書類の数字が互いに矛盾しない状態をつくることは、個人でもできる準備です。
Q3. 不動産投資で 失敗する 確率は どの くらいですか?
失敗の確率を示す公的な統計は見当たりません。何をもって失敗と呼ぶかの定義も定まっていないため、数字で答えることは避けます。代わりに、収支が崩れる条件なら挙げられます。空室が続いて返済の原資が足りなくなること、想定していなかった大規模な修繕が重なること、変動金利で借りていて返済額が上がること、出口で買い手がつかず借入残高を下回る価格でしか売れないこと。この四つは、買う前に自分で試算できます。仮に、満室なら年間600万円の賃料が入る物件で、家賃が1割下がり、さらに年間2か月分の空室が出たとします。仮にそう置くと、賃料は540万円まで下がり、空室の分を引くと450万円ほどになります(※金額はいずれも仮の置き方で、実在の物件の数値ではありません)。ここから固定資産税や管理費、修繕費を引いた残りで年間の返済額を払えるかどうかを、購入の前に計算してみてください。
Q4. 不動産投資に 向かない 人は どんな 人ですか?
人柄の話ではなく、状況の話として書けることがあります。手元の現金がほとんどない状態で始めると、最初の退去と修繕で資金が尽きます。収支の計算を他人に任せきりにして、自分で試算をしない場合も、条件が変わったときに判断ができません。返済が始まってからの家計に余裕がなく、給与が数か月止まると生活が成り立たない状況も、向いている状態とは言えません。逆に言えば、これらは時間をかけて変えられる条件です。いま向いていないからといって、その先も同じとは限りません。
Q5. 不動産屋が 一番嫌がる ことは 何ですか?
業者の側の立場で言えば、話が進んだ後に条件が変わることと、連絡が途切れることです。買付の申込を入れた後に価格や融資の条件を繰り返し変える、同じ物件を複数の業者に同時に当たっていることを伝えない、内見の約束を直前に理由なく取りやめる。どれも売主との段取りを組み直す作業が発生します。一方で、資金の状況を正直に伝えることや、買えない理由をはっきり言うことは、嫌がられる話ではありません。むしろ条件に合う物件を探す材料になります。融資の内諾がどこまで取れているかを最初に共有しておくと、紹介される物件の質が変わります。
Q6. 宅建業の 免許を 取れば、 不動産投資の 融資は 通りやすくなりますか?
免許を取ったこと自体が融資の審査を有利にすると言うことはできません。免許は宅地建物取引業を営むための要件であって、金融機関の審査の項目ではないからです。変わるのは、収入の入口が増えることと、事業としての決算が積み上がることです。仲介の報酬や買取再販の利益を自己資金に回せれば、給与からの積立とは別の経路で現金を厚くできます。ただし、開業には保証金や事務所の費用が先に出ていき、最初の報酬が入るまでに時間がかかります。国土交通省の報道発表によると、令和6年度末の宅地建物取引業者は132,291業者で、11年連続で増えています(国土交通省の報道発表)。参入は続いていますが、その中で自分が選ばれる理由をつくるのは自分の仕事です。収入が増えることを保証するものではありません。
融資が通らない理由やローン審査の厳しさ、失敗の確率についての回答
Q1. 融資が通らない理由は何ですか?
借りる人の属性、物件の担保評価、自己資金の厚みの3つに大きく分かれます。理由の開示義務はないため、条件を変えて尋ねて確かめます。
- 属性で止まる:年収・既存借入・既存物件の収支が影響
- 担保評価で止まる:築年や構造による評価額と融資期間が影響
- 自己資金で止まる:頭金比率や諸費用支払い後の手元現金が影響
当社の 見方
特に今の市況では金融機関の融資が非常に厳しい状態です。
物件を購入するにも十分な自己資金がなければ拡大できません。
もちろん投資手法の工夫や努力で必要資金を減らすのは可能ではありますが、「潤沢な自己資金がないと簡単には拡大できない」というのは間違いありません。
残債が減っている所有物件を売却して資金をつくれる人ならまだしも、ある程度の保有規模や経験があっても売れる物件がなければ同じことです。
金融市況の変化により「自己資金の必要性」が高まっている現在では、長期保有物件の購入だけでは自己資金が足りず拡大が止まってしまうため、「短期売却を混ぜて、自己資金を作る投資法」が、ここ数年、個人投資家の間で主流となっています。
この記事について
出典(6件・に確認)
- laws.e-gov.go.jp/law/327AC1000000176
- laws.e-gov.go.jp/law/339CO0000000383
- mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo16_hh_000001_00105.html
- mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000242.html
- laws.e-gov.go.jp/law/340M50000040015
- juutakuseisaku.metro.tokyo.lg.jp/application/491menkyo00-denshishinsei
更新履歴
- 第1版公開
あわせて読む
編集部のおすすめ
ほかの記事
新着記事
現在は指定がありません。



